男と女のQ&A【親子編】「娘の性の教材はアダルトビデオ?」

【Q】
大学1年生の息子と高校2年生の娘がいます。息子には大学に入ってから付き合い始めたガールフレンドがいて、時々家に遊びに来て、夕飯を食べて帰ります。その子とお付き合いするようになるまでは、部屋の中に成人雑誌やアダルトビデオなどが隠してあって、親としては少し不安な面もあったんですが、最近では部屋もきれいに整頓され、余計なものはなくなりました。
ところが、息子の部屋にあった雑誌やビデオを娘の部屋で見つけたんです。子どもたちに確かめるわけにもいかないので、はっきりしたことは分かりませんが、息子が娘にあげたというわけではなく、娘が息子の捨てたものをこっそり自分の部屋に持ち込んだらしいんです。しかも、それを性の教材にしているみたいなんです。
成人雑誌やアダルトビデオの内容を鵜呑みにして、性に対する考え方がゆがめられるのも困るし、そういう相手がいるのではないかととても心配です。
 
【A】
性交体験の低年齢化、避妊実行率の低下、若年層の性感染症、HIV、予期しない妊娠の増加など、思春期の子どもたちの性を巡る危機的状況があちこちで聞かれます。加えてセクシュアルマイノリティLGBTの性も問題になっています。寝た子を起こすなとか大人になれば自然に分かると言って、先輩が後輩に夜這いや遊郭での性を教え教わっていた時代は、とても間違った性の知識や文化が蔓延していて、妊娠や堕胎で生命を落とす女性があとを絶ちませんでした。いたずらに処女性が祭り上げられ、それが高価な値段で売買されたり、犯されて処女を失ったことで自分の価値がなくなったと思い自ら命を絶ったのも、過去の女性たちでした。これほどまでに暗く苦しい性の歴史を繰り返してきた今こそ、開かれた性教育を国を挙げて行う必要があります。
ところがマスコミなどのメディアはもちろん、学校教育の中でさえ正しい性教育をすることを避ける傾向があります。伝統文化が崩壊したり子どもや女性の性についてのモラルが低下するのではと考える人たちもいるようです。しかし、こういう風潮の中での一番の被害者は、間違った知識や性文化をインプリンティングされるあなたのお子さんたちです。
人を愛すること、性の関わりを他者と持つことの大切さと素敵さを知る思春期こそ、一人ひとりの自立や人権を尊重し、科学的、医学的、そして精神的に充実した性を学び、男女が共に生きる喜びを分かち合える性の文化を獲得するときなのです。
兄から妹へと伝わった性の教材は、決して人の心や身体を尊重し、性も人生と同じ、一人ひとり違っていいことや、自己選択、自己決定によってその喜びを創っていくことを教えるものではありません。画一的ステレオタイプの女性像、男性像を良しとし、性器の形状や発達の違いも否定するまことにお粗末なものでしかありません。それらの雑誌の広告につられて必要のない包茎手術で高額な金銭を使ったり、身体に後遺症を残したりした子どもたちもいます。
この際、ご子息には父親が、娘さんには母親が「愛と性の素晴らしさ」と「科学的な性の知識」を話すチャンスと捉え、そういう時間を作ってみてはいかがですか?できれば家族で話ができたらいいですね。
第124回

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