男と女のQ&A【職場編】「でき婚? そりゃないだろっ!」

【Q】
私の会社は男性8割、女性2割の会社です。働きやすくていい会社と思っていたんです。ところが一昨年。先輩の女子社員が、別な部署の男性社員と結婚して退社するっていう話になったんです。そういう時って、普通、みんなで祝福しませんか。それが、表向きは「おめでとう」って言ってはいるんですけど、陰では「求人難で、いい人材確保が難しいタイミングで退社する?結婚を半年ずらすとか、結婚しても子どもが出来るまでは辞めないとか、いろいろやり方はあるよね」なんて、悪口の嵐。
結局、そんな話が本人に聞こえたのか、籍は入れるけど、披露宴は半年後、退社はさらに半年後、なんて話になっちゃったんです。彼女が辞めても旦那は社員なわけだし、仕方ない選択なのかな?
ところが先日、まったく逆なことが起こったんです。後輩の女子社員が別な部署の男性社員と「でき婚」するって言うんですよ。しかも、すぐ退社するとか…。先輩の悪口言いまくってた人なのに、本人が「先輩みたくなりたくないんで先に作っちゃった」って親しい人たちに言ってるっていうじゃないですか。うちの会社っていったいどういう会社なんですか!
 
【A】
結婚をすると「女はウチ、男はソト」というこの考え方は、実は第一次大戦以降の日本型近代家族の形なのです。今「これからは女性も仕事をする時代だ」とよく言われますが、第二次世界大戦以前、日本の人口の過半数を占めていた農家では、妻も子どもも含めた一家全員で農業をすることが当然でした。
性別に基づく役割分業は、人間社会のほぼすべてに見られる現象ですが、日本で女性が結婚すると生産労働に従事せず「専業主婦」になったのは、長い歴史の中ではまだほんのわずか100年足らずのことなのです。
明治、大正期に産業が発展し、実家を継いで農業をすることができない次男以下の男性が都市部に流入し、比較的安定した収入を得られるホワイトカラー層が登場しました。第二次世界大戦後の好景気がそれを可能にしたのです。そして、女性はソトで働かず、国家に人的資源(夫を労働力として提供し、たくさん兵力になる子どもを産む)を安定供給する役目を求められるようになります。それまでの家制度とは違った過程が確立され、女性は「良妻賢母」として「ウチ」にいて夫に尽くし子育てに責任を負うべきという考え方が浸透していきました。1970年代中頃まではこうした政治的文化的背景によって女性の有業率は上昇に転じ、現在では兼業主婦が多数派を占め、女性が職業と主婦業の二者択一、いや、二重負担に悩むという状況を生み出しているのです。
ですから、あなたの結婚して退社するつもりが「人手不足なのに、今辞めるのか」という悪口の嵐とのことですはが、この「結婚退社にウチで主婦」という文化を考え直してみませんか?また、後輩も「でき婚」で即退社という「良妻賢母」型の生き方を継承しているもっとも顕著な例ですよね。「求人難でいい人材確保が難しいタイミングで退社」という悪口の嵐を「でき婚」ですぐ退社する後輩は受けずにすんで「そりゃないだろっ!」と怒る前に、結婚したら「女はウチ、男はソト」のできあがった近代の発明品である文化をしっかり考え直してみてください。
こういう考え、文化の流れが続いてしまう限り、女性の「ガラスの天井」現象は破れません。人生をどう生きるか、結婚を機会に女性も、そして人生のパートナーの夫も根本から考え、話し合う時代ではないでしょうか。
第126回

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