男と女のQ&A【夫婦編】「息子のサッカーコーチに誘われて」

【Q】
幼稚園年長の息子がいます。課外のサッカー教室に入りたがったので、夫にも相談して入れてやりました。夫も高校までサッカーをやっていたので、息子がサッカーを始めたことで大喜びしています。私はサッカーはよく分かりませんけど、練習が終わったあとのお母さんたちとのお茶会が楽しくて…。そして、何より楽しいのはコーチが一緒にお茶してくれるとき。先日は「たまにはお子さん抜きでいろいろお話ししませんか」と言われ、幼稚園が終わる前にみんなでお茶しました。気は利くし、優しいし、夫とは大違い。そんな風に思っていたとき、コーチが私に「お子さんのことでお話ししたいんですけど、2人でお茶しませんか」って言うんです。子どものことって言われれば、お断りするのもと思いお茶しました。ところが子どもの話はほんの10分くらいで、あとはなんとなくだらだらと2時間。コーチが席を立つ気配もないし、私はもちろん立ちたくないし。そして別れしなに「またお子さんのことでお話しがあるときは、お誘いしますから」と言われたんです。私は、ドキドキしました。これはますいんじゃないかなあと思いつつ、今度はどこに行くんだろうと期待している自分がいるんです。
 
【A】
「今度はどこに行くんだろうと期待している自分がいる」と正直におっしゃっています。当然、2人の性の関係を予測してのことですよね。
突然話は飛びますが、「進化」という視点から考えると、動物個体が生きている究極の目的は、生き残り、子を作り、自分の遺伝子を次世代に残すことです。オスは、出来るだけたくさんのメスと交配して、たくさんの子を作り、自分の遺伝子を残そうとします。メスは、どんなにたくさんのオスと交配しても出来る子の数は自分の作る卵の数より多くなることはなく、ヒトを含む哺乳類では、普通、妊娠期間中と授乳期間中も子は作れないので、メスが自分の遺伝子を残せる子の数は一生でとても少なくなります。ですからメスは、数少ない卵が出来るだけ生き延びられるような優秀なオス、あるいは食べ物や隠れ場所など子どもが育っていくのに必要な資源をたくさん持ったオスを注意深く選ぶことになります。
ちなみに、ヒトの男女が残せた子どもの数ですが、1994年のギネス記録では、男は17~18世紀のモロッコ王、ムーレイ・イスマイルの残した「少なくとも1042人」という数字です。「少なくとも」という曖昧な表現なのは、女の子は途中で数えるのを辞め、男の子も700人を超えたあたりで数えるのを辞めてしまったからだと言われています。
ヒトの女性による子の数のギネス記録は、27回の妊娠で、69人の子どもを産んだとされていて、これもすごい記録ですが、まあ男性の1042人には遠く及びません。
というように進化の歴史をひもとけば、オスもメスも、いえ男も女も、自分の遺伝子の生き残りをかけて性の関係を持つわけですし、はるか昔の狩猟採集時代であれば、獲物を上手に仕留めた男とセックスして、そのセックスと引き換えに食糧を手に入れた女は、その食べ物のおかげでそうしなかった他の女より生き延びて、より多くの子孫を残すことが出来たのです。
資源と引き換えのセックス、セックスと引き換えの資源、太古の昔は進化の過程で動物はもちろん、ヒトもこうして生き延び、自分の遺伝子を命がけでつないできました。
さて、あなたが生きているのはまさしく21世紀の今、進化の生き残り戦略は、もはや必要ありません。にもかかわらずお子さんのコーチは本能の中に隠れている太鼓の生き延び戦略の呼び声にくすぐられて、あなたに近づいています。そして、あなたご自身も同様です。どうぞ、ヒトの進化の過程ですでに不必要になった戦術に思いをはせ、それでも2人の間に真実の愛を見つけられるようなら、次を期待なさるのもよろしいでしょうが、そうでなければ、「次」も「お茶」で止めておくか、お断りになるのが賢明と思います。
第128回

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