男と女のQ&A【職場編】「上司にいきなりキスされて…」

【Q】
ちょっと前になりますけど、職場場の上司にエレベーターの中でいきなりハグされそうになったんです。すっと身をかわして、その時はハグされなくてすんだんですけど、つい先日、私だけ会議室に呼ばれて会議室に行くとドアを閉めた途端キスされたんです。あまりに突然だったので、よけきれなくて頬にキスされました。社内の相談室に相談に行こうと思っているんですけど、その2回のことを除けば、他のどんな上司や先輩よりいい人だし、迷っています。それに原因を作ったのは私かなあ…と。上司の誕生日にみんなでプレゼントをしたんです。その時私だけ乗り遅れちゃったんで、一人でネクタイをプレゼントしました。おしゃれな人なのでちょっと派手目なやつだったんですけど、翌日してきてくれて、けっこうみんなに褒められてるのに、私からもらったって言わないんですよ。たぶん私の気持ちを勘違いしちゃって、私からモーションかけているように思ってるんだと思います。
 
【A】
これは、2つの観点から考えられますね。
1つは、社内のセクシュアルハラスメント(セクハラ)という観点、もう1つはあなたに対する強制わいせつ罪という観点です。セクハラという観点から言えば、明らかにセクハラですから、すぐに会社の相談窓口へ話しべきと考えます。たとえあなたがどんな理由で一人だけ別にネクタイを贈ったとしてもです。
セクハラ対策は、セクハラの有無に関係なく、事業主の義務として厚生労働省は定義づけています。その第2条で「セクシュアルハラスメントとは、職場における性的な言動に対する他の従業員の対応により、当該従業員の労働条件に関して不利益を与えること」としています。セクハラは受け流しているだけでは状況は改善されませんので、不快と感じる性的な言動を受けたときは、我慢したり無視したりするのではなく、はっきりと拒絶の意思を相手に示してください。厚生労働省の定義は少々堅苦しく書かれていますが、簡単に言えば「性的なことに関する嫌がらせ」を指します。例えば、男性上司が女性の部下に「最近太ったんじゃない?」と言うこともセクハラになりますし、職場のカレンダーやポスターがセミヌードの女性(または男性)で、それを見て不快と感じればセクハラに当たります。「髪、切ったんだね」というような身体的なことに対する声がけも不快だと感じれば該当します。加害者にはまったくそのつもりがなくても、被害者が嫌だと感じればセクハラになります。
もう1つの観点は、強制わいせつ罪という観点です。
刑法176条は、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつ行為をした者も、同様とする。」と強制わいせつ罪を規定しています。条文を読む限りでは、「暴行又は脅迫」なんて受けていないとお考えになるかもしれませんが、「無理やりキスをする」のは、強制わいせつという判例があります。自由を奪うような行為全体を暴行と考えるので、無理やり抱きついて身体を触ったり、キスをしたりする行為も強制わいせつ罪が成立するということです。ただし、実際に罪に問えるかというとどう立証するか問題があるので、密室での行為ということになると、怪我を負っていたり、防犯カメラに録画されていたりしない限りハードルは高いと言えます。
あなたの場合、2度とこのような行為を受けないためには、まず社内の相談室に相談しましょう。男女雇用機会均等法は事業主に対し「対策を講ずる義務」を規定しています。会社の相談室を利用しづらい場合は、都道府県労働局の相談窓口も利用できます。
第131回

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