【Q】
夫が痴漢をして逮捕されたと弁護士さんから電話がありました。振り込め詐欺も疑いましたが、本当だということが分かり、目の前が真っ白になりました。夫は認めてないらしいんですが、逮捕が長引くと会社にも知られ解雇される可能性が高いので、なるべく早く示談にするから、とりあえず体調を崩して2~3日入院することになったと会社に連絡してほしいというのです。
夫の言葉通り、会社に連絡しました。翌日示談が成立したとのことで、夫は釈放されました。夫が逮捕されたのを知っているのは弁護士さんと私だけで、子どもたちにも会社にも知られることなく解決しました。夫の対応は正しかったと思うのですが、私の心にわだかまりが出来てしまったんです。本当は痴漢をしたんじゃないか、なぜ無罪を主張して闘わないんだろう、そんな思いが心に湧いては消え、湧いては消えするんです。結婚して25年、夫のことは信じているつもりなのに、信じ切れない自分がいる。そんな自分がいることがとても苦しいんです。それでも夫は痴漢をしたんじゃないかという気持ちが消えることはありません。
【A】
先日(6月5日)、愛知県警が痴漢撲滅を訴える目的でポスターを作製し、500枚を貼りだしたところ、インターネット上で「逮捕=有罪の確定」と誤解させる表現があるなどとして弁護士らによる批判が相次ぎ、炎上騒ぎになりました。県警は「ポスターの本来の趣旨が異なる伝わり方をした」として撤去しました。
ポスターは、痴漢撲滅キャンペーンの一環で6月1日から県内の主要駅などに掲示されたもので「あの人、逮捕されたらしいよ」というタイトルのポスターは、痴漢で逮捕された男性がアニメ調で描かれており、この男性に対し女性2人がSNS上で「性犯罪じゃん」「仕事もクビになるよね」などと男性を犯罪者と断定して噂話をしているというものです。この表現を巡っては、ネット上で亀石倫子弁護士らが「痴漢はもっとも冤罪が多い類型の一つで、逮捕=犯罪者扱いするのは一線を越えすぎ」などと批判しており、県警にも5日昼過ぎまでに55件の苦情や問い合わせの電話が寄せられたとのことです。刑事裁判では、たとえ逮捕されたとしても有罪が確定するまでは「推定無罪」が大原則です。県警は、ポスターの制作理由を「今風で若者受けすると判断した」「痴漢は犯罪だという認識を広め、犯行をとどまらせたい、という気持ちで作った」と説明し、「本来の趣旨と異なる伝わり方になった」ので、撤去に踏み切ったと言っています。
あなたの夫は、諸般の事情を考えて示談にしたとのことですが、本当はやってないとあなたには言っているんですよね。実際、過去には冤罪を主張して、夫婦で友人の協力も得、無罪を勝ち取った事件がありましたし、TVドラマや映画「それでもボクはやってない」(2007年)など、無実を勝ち取るまで必死で闘う姿を描いた作品もありました。もしあなたの夫が冤罪だとしたら、困難があっても闘うのか、夫の判断のように示談にするのか…。「結婚して25年、夫のことは信じているつもりなのに、信じ切れない自分がいる」とおっしゃっているあなた。夫の取った行動が示談という道であろうと無罪を勝ち取るまで闘うという道であろうと、事実を知るのは夫のみです。あなたの心の中の結論がどちらになるにしても、夫ととことん話し合うしかあなたの心が晴れる道はありません。2人でしっかり向き合い、納得のいくまで話し合ってください。どこまで話し合っても納得がいかないのであれば、夫との関係を見直すことになるかもしれませんが…。
第138回