男と女のQ&A【職場編】「海外勤務を経ないと管理職になれない」

【Q】
大学卒業後、すぐに今の会社に就職して今年で12年です。その間に結婚、出産をして、育児休暇を半年取らせてもらいました。うちの会社は、女性が復帰しやすい環境で、子育てしながら働いている女性も少なくありません。男性で育児休暇をとる人もいるくらいです。ところが管理職はほとんどが男性、女性はほんの一握りです。なぜかというと、海外勤務が管理職への条件になっているからです。公表されているわけではないけれど、知らない人はいません。海外勤務には3~6ヶ月くらいの短期の勤務と2~3年の長期勤務があって、短期勤務をクリアして課長、長期をクリアして部長候補みたな…。子育て中の女性にとって高いハードルです。なので、女性は係長までがやっとなんです。「そろそろこいつは邪魔」って思うと、人事から「3ヶ月海外勤務をしてくれる?」と打診があるんです。単身赴任なんてできるわけないから断ると「じゃあ、後輩を赴任させるけどいいかな?」って言われて、海外から戻ると後輩が上司になってたりするんです。立場が逆転すると勤めにくくなって、辞めていく女性もいます。海外勤務しなくても、管理職が勤まらないわけはないのに、こんなの女性をターゲットにしたリストラです。まさか役員まで目指してるわけじゃないけれど、せめて課長くらいにはなりたいじゃないですか!
 
【A】
「日本のジェンダーギャップ指数、過去最低を更新 114位に」という報告書が昨年11月2日にダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」から発表されました。ジェンダーギャップ指数というのは、男女格差の度合いを示すもので、日本は世界144カ国中114位となり、過去最低だった前年の111位からさらに後退しています。
ジェンダー格差指数は「経済活動への参加と機会」(経済参画)、「政治への参加と権限」(政治参画)、「教育の到達度」(教育)、「健康と生存率」(健康)の4分野の14項目で男女平等の度合いを指数化して順位を決めます。日本の指数を見てみると「政治参画」分野の悪化が著しく、前年の103位から123位へと大きく順位を下げています。国会議員の男女比は129位で、前年の122位からさらに順位を下げました。「閣僚の男女比」も50位から88位に順位を下げていますが、2018年10月3日の朝日新聞の報道では「第4次安倍内閣発足」という見出しで、その横には「女性登用は片山氏のみ」と添えられているので、もっと順位が下がることになるでしょう。2014年の組閣で5人だった女性閣僚が、その後の改造で3人、2人となり、ついに今回1人になってしまいました。安倍首相の掲げる「女性活躍社会」というのが、単に人気取りのかけ声だけに終わっていることが明らかです。「閣僚として女性が仕事をやり遂げることで社会に変革が起こる」と言っていた首相ですが、今回女性閣僚が1人しかいないことを追求されると「日本は女性活躍社会がスタートしたばかり」と言い訳をし、「これからどんどん入閣する人材は育ってくる」と答えました。現時点での、女性議員には人材が乏しいといっているように聞こえますが、閣僚には民間からの登用も可能ですから、女性活躍社会へ本気で取り組まないことの表明というところでしょうか。さらに「各国と比べて女性閣僚の比率は少ないと認めざるを得ないが、2人分、3人分の発信力を持っている仕事をしてもらえると期待している」とわけのわからないコメントをしました。
首相が女性で、産休明けに議会に出席した妻に代わって、TV司会者の夫が赤ちゃんにミルクを飲ませたり、おしめを替えたりしている様子が報道されたオーストラリアに比べ、とても寂しく悲しい気がします。
政治参画に続いて低いのが経済参画で、日本では政治や経済の分野での格差が深刻であることがよくわかります。そして、この格差は教育の面にも現れていて、「女の子はそんなにガツガツして大学まで行かなくていい」という価値観が今でも根強く残っています。「どうせ女性は家庭に入って子育てをすることになるのだから」と医学部の入試で差別が行われているという報道はつい先日のことです。
 
まさにこうした日本の社会で頑張っているあなたの悔しさ、怒りはたくさんの女性が共感するところです。厳しい状況ではありますが、賛同してくれる男性も増えている今、あなたのように声を上げていきましょう。ちなみに「単身赴任」という働き方は日本独特のものらしく、外国へ一人で赴任すると、「なぜ妻と子どもは一緒に来ないのだ?」と驚かれることが多いと聞いています。
 
あなたの健闘を祈ります。というか、一緒に女性も普通に課長や部長になれる世の中を作っていきましょう。先日、私の研究所でお話しいただいた中山こずゑさん(元パシフィコ横浜の代表取締役)などはその先端を行くお一人です。
第146回

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