男と女のQ&A【親子編】「姉妹で同じ男の子を好きになってしまって…」

【Q】
高校2年生と1年生の娘がいます。姉妹で同じ男の子を好きになってしまったらしく、口も利かない状態がずっと続いているんです。元は姉の方のボーイフレンドだったんです。とは言っても、1対1でお付き合いするような関係ではなく、仲のいい男女が5、6人で遊んでいるっていう程度のです。そんな様子を見ていた妹の方がその中の1人に告白をしちゃったことで、姉妹の関係が悪くなってしまって…。そうなると、姉の方も妹にボーイフレンドを取られるわけにはいかないっていうことで、「私の彼氏でしょ!」と突然関係が近いことを言い出すし…。娘たちを分け隔てなく育てようとしたことが行動や嗜好が似たようになってしまったみたいなんです。いろいろな人に「くだらない、放っておけば」って言われるんですけど、口をきかない状態が何ヶ月にもなるし、何より心配なのは、どちらが彼の気持ちを捕まえて性関係を持つかという競争になっているように思うからなんです。2人で競っていると歯止めがきかなくなりそうで、とても心配です。
 
【A】
アメリカの発達心理学者エリクソンは、人生を8つのステージに分け、それぞれのステージにおいて発達課題があり、人が精神的に幸福な人生を歩むためには各ステージでその発達課題を健全にクリアすることが大切と述べています。そして、あなたのお子さんの年齢、思春期の発達課題は「葛藤の自己受容」と言っています。
 
表面的に観ると、いかにも年子の姉妹で1人の少年を奪い合っているように見えますが、実は長女も次女も、それぞれ姉と妹を自分と比較しながら「自分とは何か?」を模索しながら葛藤し、自己否定と自己肯定を繰り返しているのです。この時期、子どもの体と心は人生で乳児期に次いで大きな成長と変化を見せ始めます。体の外と内の両方において第二次性徴が現れ、体が「大人」に変容していくと同時に、親、姉妹、他の「大人」「仲間」などとの距離を作り始めます。この体と心の発達に伴って、容姿、容貌、スタイルを他と比べて気にしたり、性格や能力の優劣を競ったりします。
 
特にこの思春期の発達課題の大きなものとして「性」についての悩みと葛藤があり、異性と健康的に交流を楽しむ経験を持つことが大切です。異性や性についての関心や衝動などの悩みと葛藤の多くは人に話せない自分だけの心の秘密になるので、基本的には大人の力では解決できないものです。自分の「あるべき姿」を作り上げ、その次元から現実の自分を評価し、価値づけるようになります。はじめはこんなことで悩むのは自分だけだと考え、自分を特殊視し、全般的に自己否定傾向を強めていきますが、友達との交流の中の温かい理解の中でそれらの葛藤や悩みを持ちつつ生きていくことを受け入れるようになっていき、「自己受容」を基礎とした自己や外部に開かれた柔軟な自我ができていきます。
 
妹は姉の親しくしているグループの仲間であるその少年に信頼感もあり、身近に感じて告白したのでしょう。姉の方は、妹のその行動が刺激になって、あたかも彼は自分の恋人であるかのような思いにかられ、2人が競って彼の気持ちを射止めようとしています。
 
相談した人から「くだらない、放っておけば」と言われたとのことですが、「くだらない」どころか、発達段階上とても大切な時期です。ただ、親が教えたり、お説教したりすることではないので、何ヶ月も口をきかない2人の娘を普通に扱い、温かく見守ってください。ある日、何かのきっかけで、何事もなかったかのように話をするようになりますから。そして、あなたには2人の姉妹しか目に入っていないようですが、その少年も思春期の自分探しをしていると理解し、それぞれの関係性の中で悩みながら、性の問題も含め、課題をクリアしていくことを信じましょう。
第149回

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