男と女のQ&A【恋愛編】「結婚しないと公言している彼の子がお腹に…」

【Q】
彼とは友達の紹介で知り合いました。お父さんが会社を経営していて、将来は彼が会社を継ぐことになっています。お互い両親に紹介し合い、今は両親公認の半同棲状態です。周りには「結婚秒読み」と映るので、「いつ結婚するの?」とよく言われますが、実は彼は結婚する気がないんです。付き合い始めて間もないころから、「僕は結婚しないよ」と言われていて、私もそれを承知の上で付き合ってきたので、これから先も結婚はないと思います。彼は「愛情を紙切れ1枚に託すなんておかしい」と言います。そう言われると私も「その通り」と思うのですが、一人になって考えると「私と彼との関係って何も担保のない不安定なものなの?」と不安になり、このまま彼と付き合っていて幸せになれるんだろうかって感じてしまうんです。
 
そんな矢先、彼の子を妊娠しました。認知はする、養育はすると言ってはくれるんですが、結婚しないでそんなこと保証されるわけはないし、不安で産まない方がいいのでは?と迷っています。
 
【A】
あなたは、彼から嫌われたわけでも、捨てられたわけでもなく、「結婚」という「制度」を嫌って「婚姻届」を出さないと言っている相手に不安と不満を持っています。日本の結婚制度の歴史を辿ってみると、古代では恋愛と結婚の境目は明確ではなく、男女の関係は平等でした。平安時代になると、夫が妻の家に会いに行く通い婚を経て、同居するのが一般的になります。通い婚は、妻はひたすら待つだけで、夫が訪ねてこなければ離婚、他に愛人を作ってもどうすることもできないという辛いものでもありました。
 
鎌倉時代から戦国時代になると、武士が権力を持ち、家父長制が成立します。女性の地位が低くなり、妻が夫の家に嫁入りするようになります。すると、妻は夫の所有物と考えられるようになり、女性は夫を自分の意思で選ぶことができず、武家の結婚では「相手を味方につける」あるいは「油断させる」ことを目的に結婚が決められ、愛情や人柄で結婚を決めるなどはできませんでした。
 
江戸時代になると、幕府は上下の秩序を守るため「家」をすべての基礎とするようになります。女性は父に従い、結婚してからは夫に従い、老いては息子に従うという三従の教えにより低い地位に置かれ、子どもが生まれない妻は「三行半」という短い文書で離婚されても文句は言えなかったので、妻は夫に自分以外の女性=妾 を勧め、その子を自分の子として育てることもありました。
 
明治時代になると、政府は民法を制定し、一夫一婦制の法律婚を規定しましたが、権利は主として男性にあり、女性、特に妻には義務ばかり負わされ、結婚によって無能力者とされました。夫の同意がなければ大きな買い物もできず、ましてや自分の意思で離婚を決めることもできませんでした。大正、昭和になり、戦争が始まると国家維持のため、家制度や家族に対する統制が厳しさを増し、男女平等の世の中を作ろうとした平塚雷鳥をはじめとする女性らの思いや機運はかき消されていきました。
 
第二次大戦が終わり、1945年、日本も終戦を迎えると、これまでの状況とはがらりと変わり、日本は民主主義国家として生まれ変わります。日本国憲法第24条には「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」とあり、「夫婦は平等」と規定されています。とはいえ、現実は憲法の理念通りでなく、大昔からの、あるいは戦前の家制度の名残は、社会慣習や私たちの意識の中に根強く残っていて、「嫁にやる」「嫁にもらう」など、今でも使われていて、結婚で夫の姓に改正する女性は98%にものぼります。こうした結婚制度の歴史の中で、婚姻届を出さない「事実婚」を選択するカップルも、新しい動きとして出てきて、結婚に対する考え方が多様化してきています。
 
さて、あなたの彼がそういった権力や時の政府に統制されない、利用されない「2人の愛」を基本に、あなたとあなたのお子さんたちを愛し続けたいという筋の通った考え方の持ち主なら、現行の法律や歴史的結婚観の先を行く男性として、多少不安はおありでしょうが、あなたと妊娠したお子さんを大切にしてくれるでしょうから、その辺のことをよく聞き、話し合ってみてはいかがでしょうか?
 
(松井久美氏(高知新聞記者)「結婚の歴史」を参考にさせていただきました)
第152回

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