男と女のQ&A【夫婦編】「夫婦の微妙な距離感に疲れました」

【Q】
一人息子が大学に入学して、子育ても一段落しました。結婚後、私が仕事を辞めて子育てに専念してきたんですけど、家を購入したこともあり、息子の小学校入学を機にパートに出始め、高校に入学してからはフルタイムで働いています。夫は、私を家に置いておきたい方なんですけど、それでは生活ができないので、不満に思いながら黙認状態。10年くらい前、夫の浮気が発覚しましたけれど、蓄えもなく私の収入では、子どもを養っていけないので、うやむやにして離婚はしませんでした。夫はその女と別れたって言うんですけど…。続いていたとしても離婚できるかっていうと、生活の問題もあって、簡単にはいきません。気分は悪いですけれど、触れないようにするしかないかなあと。私は、今勤めている会社に親しくしている男性がいて、食事をしたり飲みに行ったりする関係ではあるんです。何度かホテルに誘われましたが一線は越えずにいます。夫はそれに気づいているらしいんですけど、夫も離婚を本気で考えるということでもないようなので、お互い微妙な距離感を保っています。でも、こういう生活は疲れますよね。息子が大学に入ったこともあり、学費を夫に出させることを約束して別れるか、それとも会社の男性ともう少し親しくなって、夫婦生活はこのままだらだら続けるか悩んでいます。
 
【A】
当たり前に思われている社会的制度や文化、慣習も、時代の変化に伴って実情にそぐわなくなっているものがたくさんあります。結婚制度がその1つです。どんぐりの実を拾い、貝を食べていた古代から縄文、弥生などの時代を経て、中世あたりまでは、制度としての「結婚」はほとんどなく、中世以降、武士階層が台頭し、家父長制的な家族のあり方が広がりました。そこでは「戦」が主な仕事ですから、男性の役割は戦で功をなすこと、女性の役割は優秀な遺伝子を残すことでした。
 
そうなってくると、古代日本社会のように、性にもおおらかで相手が複数いる「対偶婚」のような自由な男女の結びつきは影を潜め、武士階級だけでなく庶民の間でも一夫一婦婚、あるいは一夫多妻婚が広まります。対偶婚の時代、女性の生活は村やコミュニティーに埋め込まれていて、「家族」という単位はそれほど明確ではなかったため、夫に頼らず食べていくことも可能でした。
 
しかし、男性優位の家父長制では、女性を男性に従属させ、子どもを作るという営み、そしてそこに女性を縛り付ける仕組みが「結婚」となり、女性は男性に頼らなければ食べていけないことになります。血統が重視され、「子の父は誰か」をはっきりさせるために女性の浮気は厳しく罰せられ、68年前まで刑法に「姦通罪」という罪がありました。「姦通罪」は「結婚している女性が夫以外の男性と性的関係を結んだら罰する」というもので、処罰されるのは「姦通をした女性」(妻)と「その相手(夫以外の男性)」で、「夫」は「妻以外の女性」と性的関係を持っても相手の女性が既婚者でない限り罰せられることはありませんでした。あくまで既婚の「女性」を対象とした法律だったのです。
 
第二次大戦後、「姦通罪」はなくなり、1960年代には恋愛結婚が見合い結婚の数を上回るようになりました。「食べていくための結婚」も、経済的自立を目指す女性の増加に伴って少しずつではありますが減りつつあります。「あなただけを愛しています」という相手を特別扱いする行為、「この人生をお互いに助け合って幸せに生き抜くために手を組みましょう」という思いを「結婚」という形にする時代になったのです。
 
あなたの場合、夫が10年前に浮気をし、「その女とは別れた」とのことですが、それをきっちり解決することなくうやむやにしたまま結婚生活を送ってきた。あなたはそのストレスを会社の男性とのデートで晴らしている。結婚の目的を①「あなただけを愛している」と②「幸せな人生作りの同志」の2つと考えるなら、①はすでに崩壊しています。②は中身をどう考えるかによって違いますが、夫と別れるのか、あるいは会社の男性とさらに親しくなって浮気に発展してもこのまま結婚生活をだらだら続けるのかはあなた次第ということです。
 
ご自身の価値観で判断してください!
第153回

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