男と女のQ&A【親子編】「息子の叱り方が分からない」

【Q】
結婚して10年、小学2年生の息子と幼稚園年長の娘がいます。1年くらい前から、息子が私に突っかかってくるようになりました。「宿題やりなさい」と言うと「いやだ!」と返してきますし、「明日の学校の用意をしなさい」と言うと「めんどくさい!」と言います。夕飯の時は、カレーのにんじんやスパゲッティのピーマンを全部拾って出してしまうので、食べるように注意すると、「こんなまずいもの食えない!」と言うので「とにかく食べなさい」と言うとティッシュペーパーに包んでゴミ箱に捨ててしまったので、腹が立って、つい叩いてしまいました。一度叩いてしまうと、そういう叱り方が常態化してしまって、それからは何度も叩きました。叩くととりあえず言うことを聞いてはいたのですが、3ヶ月ほど前から不登校になり、何を言っても返事もしなくなってしまいました。娘とは、仲良くやれているんですが、息子をどう叱ったらいいのか分かりません。最近、すっかり気力がなくなってしまったように感じます。
 
【A】
あなたの問題は4つあります。まずはじめは、いかなることがあってもお子さんに暴力はやめてください。
絶対に良い影響は与えません。今は叩かれることで母親の言うことを聞くかもしれませんが、思春期、青年期に母親に暴力を振るったり、逆に萎縮してやる気をなくしたりします。
 
次に発達心理学上の問題です。アメリカの発達心理学者であり、精神分析家でもあるホーンブルガー・エリクソン(1902~94)は人生を8つの段階に分けて、その年齢ごとの発達課題を示しています。
発達課題をそれぞれの段階で達成することで次の段階に進めるとエリクソンは言っており、達成できず失敗した場合、心理的に問題が生じるとしています。
あなたの2年生の男の子の発達課題は、幼児期にクリアした「乳児期より活動範囲を広げることにより獲得した自主性」を伸ばして「学校生活を通じて、より勤勉性を獲得する」ことです。
この時期は特に「自己管理の習慣」を身につけ、「道徳性、良心の形成」を獲得していく時期です。小学校に通い始め、勉強の楽しさや友達と遊ぶことの楽しさを知る時期でもあります。
この時期には、周囲の大人が適切にサポートせず、ただ叱っているだけでは、問題は解決しません。かえって子どもは「自分には出来ない」と劣等感を抱き、反抗的ななります。その上、手を挙げる、叩くというあなたの行為は、お子さんの心と体を最も傷つけるものです。自意識や知的好奇心が強まり、ボキャブラリーが増え、情報を収集したり、同時にまだ心身のぎこちなさが残る頃でもありますので、暴力を振るうのは絶対やめて、あなたの気持ちをちゃんと言葉にして伝えてください。
 
3つ目の問題は、「娘」とはうまくやっているのに「男の子」には手を挙げてしまうことです。これは精神科医フロイト(1856~1939)の言う「エディプス・コンプレックス」と関わっています。フロイトは、子どもは「無意識に異性親に、より深い愛情を抱き、同性親には嫉妬する葛藤感情を持つ」と言っています。この愛情や嫉妬の衝動は、無意識下で抑圧されているので、このことを充分理解して、何らかの方法で解放しないと一種のしこりか屈折になります。「エディプス・コンプレックス」は、ギリシャ神話の中で、赤ん坊の時、川に流されて隣国の王子となったエディプスが、親とは知らずに実母と結婚してしまい、自ら目を突いて死のうとしたエディプス王の話から取られています。
お子さんは大好きな母親から暴力を振るわれ、叱られるわけですから、益々屈折して反抗的になります。どうかお子さんを叩かず、抱きしめて、言葉で伝えてあげてください。
 
最後の問題。あなたはもしかすると「夫」への不満を息子さんに向けているのかもしれません。発達心理学や精神分析理論のことを述べましたが、この最後の問題の可能性が強いと考えられるので、身に覚えがないか、よく自分の心の中を点検し、夫の不満は夫にぶつけ、息子さんに向けないようにしてください。
第159回

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