【Q】
学生時代に仲の良かった5人で食事をしました。2人は既婚で子どももいて、私とあと2人は結婚を考えている彼氏がいます。5人が集まるのは5年ぶりだったので盛り上がりました。既婚の2人は、家庭の自慢話、未婚の2人は彼氏のいいところや悪いところ、楽しかった旅行の話、ドキドキしながら彼の実家を訪ねた時の話とか、興奮しながら話してくれました。私も彼氏の話をしようと思ったんですけど何も話すことがないんです。旅行も人に話すほど楽しかったことなんてない、彼の両親にも会ったけれど“普通にいい人”と思っただけで、特に緊張したわけでもない…。「彼のどこが好きなの?」って訊かれた時は困りました。見てくれは悪いし“気が利かなくて鈍感”っていう救いようのない悪いところばかり浮かんできて、いいところなんて全然浮かばないから、どこが好き?って言われても答えられないんです。仕方なく「ちょっと鈍感なとこかな?そういうのってこっちも楽だから」ってごまかしたんですけど、そんなの嘘ですよ。鈍感なことにいつも腹が立ってるん私は彼を好きなんじゃなくて、彼氏がいなくなっちゃうのが嫌なだけなのかも…。
【A】
動物個体が生きている究極の目的は、生き残り、子をつくり、自分の遺伝子を次世代に残すこと。ヒトを含む哺乳類ではふつう、妊娠期間中と授乳中は子をつくれないので、メスが一生のうちにつくれる子の数は限られています。メスは数少ない卵ができるだけ生き延びられるような戦略として、子どもによい遺伝子を伝えられるような健康で優秀なオス、あるいは、食べ物や隠れ場所など子どもが育っていくのに必要な資源をたくさんもったオスを注意深く選びます。(麻生一枝「科学でわかる男と女の心と脳」より)
あなたは友だちに「彼のどこが好きなの?」と訊かれて困っています。あなたの遺伝子ができるだけ生き延びられるためには健康で優秀なオスを選択しなければならないとすると、あなたは生き残り戦略がうまくいっていないことになります。困った挙句、「気が利かなくて鈍感」な救いようもない悪いところを、無理矢理、「そうゆうのってこっちも楽だから」とごまかしています。もし原始時代、洞くつの中でくらしていたとしたら「気が利かなくて鈍感」なオスではあなたも子どももアッという間に猛獣のえじきになってしまいます。だからあなたが彼の鈍感なことに腹を立てているのは動物の究極の目的である生き残り戦略としては正しい感情なのです。
ところがあなたは、その生き残り戦略の本質を無視して「彼氏がいなくなっちゃうのが嫌?」なだけで彼と付き合っているのですね。彼の健康で優秀なところをひとつも上げられずにお付き合いしていれば、いずれは破局がくるのは目に見えています。早々に彼とは別れて、生き残り戦略を立て直した方がいいでしょう。
ただし、物は見方次第で変わってくることも最後にお伝えします。あなたから見ると彼は「気が利かなくて鈍感、見てくれも悪い」と感じられるのかもしれませんが、別の人から見たら、「何があっても動じず、沈着冷静、人にお世辞を使わず、裏表がない。誠実で見てくれを飾ろうとしない質実剛健な人物」と見えるかもしれない、ということです。「コップの水が半分しかない」と思うのか「半分もある」と思うのか、コップにある水の量は同じでも見方が変われば逆になる例はたくさんあります。
この際、あなた自身の価値観をもう一度、見直してみてはいかがでしょうか?恋人にばかり求めるのではなくて自分がお相手から「どこが好きと言えば全てが好き」と言ってもらえるように。
第167回