男と女のQ&A【職場編】「盗撮の疑いをかけられた上司がかわいそう」

【Q】
半年くらい前に、上司の男性が“盗撮の疑い”で警察の聴取を受けたんです。ショッピングモールのエスカレーターで前にいた女性のスカートの中を盗撮したとかいうことだったみたいなんですけど、上司は一貫して否認してて、当然スマホとかも確認されて、その上で解放されたらしいんです。どんな行動を盗撮と間違えられたのか分かりませんけど、私はそういう人じゃないと思うんで、本当に間違えられただけだと思うんですよ。ところが、誰かが聴取を受けたことをSNSで拡散しちゃったみたいで、社内の、特に女子の間で、「盗撮上司」として避けられるようになっちゃったんです。逮捕されたわけではないので、あからさまに避ける人はいないけれど、陰ではヒソヒソ言ってるし、そのことを本人も知っていて、思うように仕事が進まずすごく困っているのが分かるんです。もう半年も経ているのに、全然噂は消えなくて、ずっとレッテルが貼られたままなんです。
 
【A】
2007年、周防正行(すお まさゆき)監督の「それでもボクはやってない」という映画が公開されました。痴漢冤罪に対して鋭く切り込んだ社会派ドラマでした。突然、痴漢の疑いをかけられ、自ら濡れ衣を晴らそうと立ち向かっていく主人公の話です。実際にあった話を元に、周防監督が11年ぶりに制作した映画です。現代の刑事裁判における問題点に焦点を当て、痴漢の冤罪事件に立ち向かおうとした時の厳しい現実をリアルに描いた作品です。
 
主演の加瀬亮さん演じる主人公が、必死で無実を訴えるのですが、弁護士でさえ「本当に無実でも無実になる保証はない。示談にすればそれでおしまい」などと衝撃的な発言をします。刑事だけでなく検察官からも不当な扱いを受けます。否認を続けて10日間の拘留質問をされる主人公に母親や友人は、役所広司さん演じる有能な弁護士を捜してきます。そしてその部下の女性弁護士を瀬戸朝香さんが演じていますが、彼女は「痴漢とうい卑劣な行為には組したくない」と、かたくなに弁護を拒否します。上司の弁護士は「君が彼を本当はやっていると確信したら降りてよいから」と諭します。自白を迫る「人質司法」(自白すれば勾留期間が長引かないのに対し、否認すると勾留期間が長期になる)で無実を勝ちとる確率は3%という裁判の中で、主人公は懲役3ヶ月、執行猶予3年という有罪判決を受け、母親は泣き崩れ、協力した友人たちが茫然とする中、主人公が「控訴します!」と宣言するところでこの映画は終わります。
 
2003年に起きた実際の「西武新宿線事件」でYさん(39才)は1年2カ月の有罪判決後、誤認された可能性が強いとされ、逆転の無罪判決を勝ち取りました。無罪の証拠を集めるために2年の間、協力した家族や友人達に感謝する言葉を発表しています。その他にも、やはり痴漢として逮捕された夫の無罪を信じ続けた妻や友人が無罪を勝ちとった事件もありました。
 
盗撮など痴漢行為はいかなるものも恥ずべき行為で許すことはできません。そして男性の中にはこの恥ずべき行為を出来心、又は癖のように何回もくり返す者がいるのも事実です。それらは決して許されることではありませんが、あなたの上司は一貫して否認しており、スマホも調べられて解放されたとのこと。あなた自身も「そういう人じゃないと思う」と言っているのですから、自分の考えを信じ、仕事の協力をしてあげてください。否認しても逮捕されれば会社も解雇されるであろうなか、あなたの上司は汚名を挽回しようと必死で出社しているのですから。そして、あなたが上司を信じ仕事をし続けることが、少しずつ周りにも変化をもたらすことと思います。
第171回

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