男と女のQ&A【親子編】「28歳で引きこもっている息子」

【Q】
28歳の息子と23歳の娘がいます。息子は、中学2年生の時、同じ組の男の子にいじめられたのがきっかけで学校に行けなくなりました。息子が不登校になってしばらくすると娘も小学校を休みがちになり3ヶ月くらい行ったり行かなかったりが続きましたが、その後登校できるようになり、何とか大学を卒業して今はOLをしています。息子は、そのまま今も家から出られません。私が食事に誘うと近所のファミレスには行くので、最初は2週間に1回くらい、しばらくしてそれが週1回になり、3日に1回になり、今は土日も含め毎日一緒に食事に行くようにしています。家にいると部屋でずっとパソコンをいじっているだけで会話もありませんが、ファミレスではけっこうしゃべるし、少しでも外に連れ出すことで私もホッとするし、もしかしたら引きこもり解消のきっかけになるのではないかと続けています。でも間もなく30歳。子どもがいてもおかしくない年齢なので、アルバイトでもいいから、とにかくまず外に出てほしいのですが…。
 
【A】
息子さんがいじめにあい、不登校になった中学2年生という年齢は、発達心理学上では人生の中で児童期から青年期への移行期で、子どもから大人、成人へと成長していく過渡期です。この時期は、自分自身の変化も周囲の環境の変化も大きく、翻弄されがちな時で、疾風怒濤の時代と呼ばれています。青年期は思春期とも言われ、生理的成熟(生殖可能な身体を持つこと)を迎えることで始まり、身長、体重などの発達も著しく、男子は精通や声変わりが現れ、体つきも男性らしくなってきます。身体的変化は周囲の人の見方を変え、行動範囲を広げ、自由度が増していきます。
 
こうした身体的変化や社会的変化と共に「自分が独自の存在であること」に気づき、自己の内面に目が向けられる大切な時です。その中で孤独感や劣等感に悩まされる心理的変化も急激に起こり、この時期は「第二の誕生」でもあります。自分を取り巻く環境と自分自身の変化を調整しながら適応することが求められ、この適応に多くのエネルギーを必要とします。(山下富美代著「発達心理学」より)
 
さて、あなたはこの大海の嵐に翻弄される小舟のような青年期(12、3歳~25、6歳くらい)に、親が小舟の舵を取ってしまっています。娘さんは不登校の時期が思春期でなかったことと「女の子」であったことから、お母さんとしての対応が息子さんに対するそれと違っています。お母さんは、はじめは息子を外へ連れ出そうと、たまにファミレスへ連れて行きましたが、今では毎日とのこと。父親であり夫である男性の話が何も出てきませんが、たぶんあなたは夫との関係が夫婦としての機能を果たしていないと思われます。
 
不登校の当初は母と息子としての外出が、今では息子を夫の代用、あるいは恋人代わりにしています。精神分析論の創始者、フロイト(1856~1939)は、4、5歳の子どもが異性親を好きになる傾向、心の癖をあげ、エディプスコンプレックスと名付けました。特にその名称の元であるギリシャ神話で父とは知らず戦いで父を殺し、母と結婚したエディプス王子のように、男の子は母を慕うと言われています。
 
80-50問題という80歳の親が50歳の子どもを養う事態を避けるためにも、息子さん自身が「Who am I?」「Where am I going?」を明確にする自我同一性の確立をするために、息子さんから精神的、身体的距離を置くことをお勧めします。
第189回

ページ上部へ