男と女のQ&A【夫婦編】「夫と寝室が別、“この方が楽”と思ってしまっている私」

【Q】
結婚して5年です。子どもがいないので、私も夫も会社勤めをしています。コロナの影響で、2人ともたまに出社はしますけど、在宅ワークが中心です。コロナ前と比べると一緒にいる時間は増えたんですけど、リズムがすっかり狂ってしまって、なんだか落ち着かないんです。最初のころは一緒にいられることを単純に喜んでいたんですけど、長くなるとお互いに相手の存在がうっとうしくなってきて、夫は毎晩ペットの犬と一緒に寝るようになってしまいました。今では部屋も別々です。以前の私なら、そういう状況を寂しいと思っていたと思うんですけど、今は“この方が楽”と思ってしまっているんです。
 
【A】
昔々、原始時代は、男女が気ままに求婚する「共同婚」が行われていて、男が女の家に通う「妻問婚」の形態に発展していったと考えられています。古墳時代には、この「妻問婚」が行われていたようで、その後書かれた古事記や日本書紀、万葉集などにも「ツマドイ」の語が見られます。
妻問婚は、男が女の家の窓や戸の隙間から呼んだり、男の求婚歌に女が答歌するなどの方法で行われる「自由恋愛」でした。あの有名な竹取物語も何人もの貴族の男性が、かぐや姫の「婿」になろうとしてあらゆる手段を用いて「よばい」つまり「求婚」(呼ばい)を試みています(後に「よばい」は「夜這い」という風習につながっていきますが)。
 
しかし、この求婚(よばい)によって結婚が成立しても、夫婦は「別居」でした。子どもが生まれると、生まれた子は母のもとで育ち、その家の財産は女性が相続するという母系氏族制が奈良時代、平安時代と続きますが、鎌倉時代、武士の勢力が強くなり、「嫁取り婚」、家と家の結婚が現れ、母系家族の形が崩れていきます。それまでの長い歴史の中で、女性は生まれ育った実家で比較的自由に生活したり子育てをしたりしてきたと思われます。通ってくる男性、夫のことが嫌になれば門を閉ざし、会わないことも出来ました。もちろん、男の方も嫌になって足が遠のくこともあるわけですが、女性は経済的にも精神的にも実家に守られているので、もし男が通ってこなくなっても打撃は少なくてすみます。
 
さて、あなたは夫と寝室も別になり、彼はあなたの代わりにペットの犬を抱いて寝ている。はじめはそれを寂しいとも思ったけれど、今は“この方が楽”と思ってしまっている。そして、そう思う自分が「いったい夫のことを愛しているのか」、そしてその逆も心配になってご相談なさっているんですよね。
千五百年も昔の「妻問婚」の話をしましたが、戦いが常に行われ、武士、男性の力が強くなった鎌倉時代以降は「嫁取り婚」になり、女系制が崩れ、女性は夫や夫の親族の顔色をうかがって、ビクビクオドオド暮らすことが多くなりました。あなたは「妻問婚」で言えば、夫が訪れてこなくなり、妻もその方がのびのび楽に暮らせているということですよね。
 
コロナ禍での生活は、これまで経験したことのない生活なので、心がついて行くのにも時間がかかります。これまでは、仕事の時間は別々の生活で、眠っている時間を除けば、夫婦がお互いに相手に関わる時間はほんのわずかでした。夫婦の関係だけを見れば、仕事をしている時間も自分の時間(プライベートな時間)だったわけです。それが少なくなり息苦しさを感じる人も増えています。2人にとって最も良好な距離感はどれくらいの距離感なのか、よく話し合ってください。話し合っても納得がいかないのであれば、一緒に生活するのは難しいかもしれませんね。
第198回

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