【Q】
2度目の緊急事態宣言が出され、私たち夫婦も時差通勤や在宅ワークが増えました。子どもたちは学校があるので、夫と2人で過ごす時間を楽しめるかなあと思ったんですけど、お互い相手の一挙手一投足が気になって、イライラ、ブリブリ。コロナ離婚なんていう言葉が出来るくらい離婚の危機に直面している夫婦も多いようで、私たちも例外じゃありません。とはいえ、私たちは感染対策をきっちりして外に出られないわけじゃないので、たまには息抜きも出来るんですけど、深刻なの両親です。80歳を過ぎている両親は外出が難しい。2人で生活しているので、テレビでも観て家で過ごすように言ってるんですけど、最近の番組って若者をターゲットにした番組ばかりで父と母が楽しめるような番組なんて相撲くらいしかありません。先日、母から電話があり来てくれって言うから行ってみると、顔に痣があるんです。父に殴られたって言うんですよ。父は母に手を挙げるような人じゃなかったので驚きました。どこか気持ちのやり場をと思うんですが、この状況でどうしたらいいのか困っています。
【A】
まずはじめに気になったのは、実家のお父様は今までお母様に「手を挙げるような人じゃなかったので驚きました」とあなたがおっしゃっていることです。新型コロナの感染拡大防止のために緊急事態宣言が出され、80歳を過ぎたご両親が外出もままならず、テレビでも観るしかない毎日で、お父様がイライラしてお母様の顔に痣ができるほど暴力を振るった、と心配してのご相談です。
このコロナ禍の緊急事態宣言によって日常生活が大きく変わったのは確かですが、環境の変化がキッカケで、もしかしたら「認知症」の症状を発症したのかもしれません。認知症の原因や治療法は未だ解明されていませんが、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れ、物事を理解する力や判断する力がなくなって、社会生活や日常生活に支障が出てくるようになる症状です。年齢とともに、物覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。こうした「物忘れ」は脳の老化によるものです。
認知症は「老化による物忘れ」とは違い、放っておくとだんだん進行して「忘れたことの自覚がなく」「体験したことを丸ごと忘れる」ようになります。お父様のように今までお母様や子ども達に暴力を振った事がない穏やかな人柄だった人が、感情のコントロールが効かず急に理不尽に暴力的になったり、「もの盗られ妄想」に陥って、自分の財布や大事な物を盗られたと言ってお母様を責めたり、ひどくなると徘徊をしたりするようになります。アルツハイマー型にしてもレピー小体型認知症にしても「誰もがなり得る病気」ですが、治る認知症もありますし、早期発見、早期治療で進行をかなり遅らせることもできます。2018年の調査では65歳以上の約7人に1人は認知症(厚労省研究班)と報告されています。
受診もお父様が嫌がるのであれば、はじめから神経内科や物忘れ外来ではなく、かかりつけのお医者様に相談するのがいいでしょう。医師の診断にはふだん本人の様子を知っている家族の話が役立ちますので、お母様とあなたが付き添って、「最初の異変(お母様に暴力を振るった)はいつ頃か?」「物忘れはないか?」「この半年の間の様子」「他の病気や服用中のお薬」等を整理してメモしておくといいでしょう。
診断の結果、「認知症でない」ということであれば、ご両親の言い分をよく聴いて、お父様に「暴力はいかなる理由があってもダメ」と話してください。
第200回