男と女のQ&A【職場編】「“外で会ってよ!”と店外デートに誘われて」

【Q】
3年前離婚して、男性相手の接客業をしながら、シングルで6歳と4歳の子どもを育てています。これまで生活費に困ることなく何とかやってきたんですけど、緊急事態宣言で客足が減って、以前の4分の1くらいの収入になってしまいました。このままお店に出ていても、以前と同じような収入に戻るか分からないので、お店をやめてスーパーや飲食店でのパートに変わろうかとも思うんです。でもパートの収入だけでは生活出来ないんです。状況を話したわけじゃないんですけど、お店の様子から状況を察したのか、何度か指名してくれていた男性に「外で会ってよ!」と誘われました。今まで仕事とプライベートはきっちり分けてきたので、そういう誘いがあってもすべて断ってきました。でも、それで生活出来るのなら、ありかなって思うようになりました。ただ、これまで自分が越えずに来た一線を越えてしまうと、これまでの自分が壊れてしまいそうでとても不安です。
 
【A】
売買春の人類的起源はあまりハッキリはしていないのですが、その一番古い例のひとつは、紀元前の古代オリエントにおける寺院売春です。それには、見知らぬ男たちに身を任せる女性が宗教的にあがめられた神聖売春と、奴隷が売春による収入を神殿に収める2種類の形があったとされています。しかしこれが現代の産業化され、同時に非合法化された売買春と同じ行為とは言えないという見方もあります。
 
日本での売買春が成立したのは10世紀の初め頃、「遊女」や「白拍子」という歌舞音曲の奉仕をして、支配層の裕福な人々から報酬を得ることから始まりました。近世になると江戸吉原に遊女達が集められ文化サロンとしての華麗な文化が花開いた一方、農村の貧しい女性たちがわずかな金銭を親に渡すだけで売買され、過酷な労働条件の中で性病をはじめとする病気になっても、ろくな手当もされず多くの女性たちが命を落としたり、絶望して自ら命を絶つ遊女も多かったそうです。
 
近現代でも、第二次世界大戦後、米兵相手の売春を整備するために組織された「赤線」の設置は1956年に売春防止法で一応の流れに終止符を打ったことになっていますが、1990年以降、売買春をめぐる議論は、成人女性の自己決定に基づく売春を犯罪視する根拠ではないとする意見も台頭し、それをセックスワークとして非処罰にすべきだという声も出てきました。しかし売春防止法は売る女性のみ罰し、買う男性をとがめないという極めて不合理なもので「性道徳の二重基準」と女性を「性欲処理の対象」とする明らかなジェンダー・バイヤスがあります。
 
コロナ禍の中で幼いお子さんを2人育てる困難さはお察しいたします。これまで性を売買して生活の糧を得ることに一線を画していたとは言え、あなたの人格が守られていたとは言えないのではないですか?今回、特定の男性と外で会うことで収入を得ることになると増々、仕事とプライベートの区別をつけづらくなり、「自分が壊れてしまいそう」とおっしゃっています。当然、あなたのような女性に行政、国がしっかりとした支援をすべきですが、企業や自粛要請のかかった飲食店の経営者には支援金が出されるのに、風俗営業店や従業員、中でも性処理を直接の仕事としている方にはまったく支援がありません。とても理不尽なことですが、このことをきっかけに、行政の窓口や支援団体(Grow As People)も開設されていますので、そういったところに相談し、スーパーや飲食店のパートに仕事を切り替え、頑張ってくださることを願っています。
(図解雑学「ジェンダー」海老原暁子他参照)
第201回

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