男と女のQ&A【恋愛編】「メールやオンラインだと気持ちが伝わらない」

【Q】
2年前、電車の中で気分が悪くなって真っ青な顔をして立っていた私に座っていた彼が、「どうぞ」って声をかけて立ち上がってくれたのがきっかけで付き合い始めました。優しい人だなあって思ったんですよ。でもコロナ禍で会う機会が減って、2年も経ってるのに彼のことが分かってるような分かってないような…。お互い親と同居なので会う機会を減らして、メールとオンラインでの会話が中心なんです。でも、直接会うのとは違って、相手の気持ちを取り違えてムカついたり、言い回しがきつくなって相手を怒らせちゃったりするんです。「メール人格」みたいなのってありますよね。なんかぶっきらぼうな表現っていうか、相手を意識しない表現っていうか…。オンラインも、なんか言いっぱなしになるっていうか…。たまには会ってはいますけど、会った時もそれまでのメールやオンラインでギクシャクした関係が修復できなくて、いい関係を作りたいって思うのに、いつも最後は喧嘩になっちゃうんです。
 
 
【A】
私たちカウンセラーが個別面接を行う時の基本技法として言語的技法と非言語的技法があります。カウンセリングとは、言語的、非言語的コミュニケーションを通して、行動の変容を試みる人間関係である、と定義づけられています。あなたと彼の関係は、カウンセラーとクライアントという立場ではありませんが、人とのよい関係を築く上で、この2つの基本技法を外すわけにはいきません。
 
言語的技法は「相手の身になって話を聴く」という「受容」という技法が中心になりますが、これにも非言語的技法、例えば「うなずき」や「優しい眼差し」などが伴わないと、相手は自分が適切に受容されたとは思えません。かすかな「うなずき」や「優しい眼差し」で受け止められたと感じると、相手は自己表現が促され、カタルシス(浄化作用)が行われます。
 
言語的技法に「繰り返し」という技法もあります。これは、相手の話を聴いて、その内容をそのまま繰り返す、相手の話を一区切り聴いたところで「そうなんですね。××と思っているんですね」と要点を整理して繰り返す、話の中で相手が伝えたいと思っていることを受け止めて、その発言の中で重要と思われる言葉を取り上げ、それを提示するなどがあり、その結果、相手は自分が受け止められたと感じて、より深い「信頼関係」が築かれます。
 
相手の言動に対し、批判も判断も助言もしないので、その安心感が信頼関係を深めていきます。この時も、この言葉による繰り返しに非言語の息づかいや顔の細やかな表情はもちろんのこと、手や足、体幹の動きによる非言語動作が伴わないと、相手はただ「オウム返し」されているだけで「確実に受け止められた」という実感が伝わりません。
 
あなたと彼がメールやオンラインで会話をしている時、実はこの非言語表現が伴っていないのです。メールはもちろん、声の質や高低、リズムや速度も皆無ですし、オンラインで顔は見えていても、目の表情や手足の動き、最も本音が出る下肢の動きや体幹(背筋や肩、背中の様子など)がまったくといっていいほど分かっていません。そこであなたが困っているように一方的に押しつけてしまったり、きつい言い方だけが伝わったりしてしまい、関係がギクシャクしてしまいます。会えない日々を上手に使うには、彼の背中や下肢が、何を語っているかメールの声はどんな声なのかイメージを膨らませて受け止める努力をしてください。
 
経験がおありかと思いますが、メールの場合は特に紋切り調になったり、自分勝手な表現になったりしがちです。それをあなたは「メール人格」とおっしゃっているのだと思いますが、おっしゃる通り、メールにはそういう危険が潜んでいます。例えば腹が立った時に「ムカついた」とだけ打ってしまうと、別れたいくらい腹が立ったのか、「もーっ、まったくぅ!ムカついたぁ」というような甘えたり、親近感を含んだりした表現なのか分かりませんよね。皆さんよく使っているかとは思いますが、そんな時は誤解を与えないように絵文字やスタンプ等を上手に使って自分の気持ちを伝えるようにしてください。
第207回

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