男と女のQ&A【親子編】「経済的に自立するために看護師?」

【Q】
コロナの感染拡大で、医療現場が逼迫しているというニュースが毎日流れています。防護服に身を固めて治療に当たっている医師や看護師の皆さんには、私たちは感謝しかありません。政府や地方自治体の力で少しでも給料を上げてあげてほしい、そんな気持ちでニュースを見ています。今年の春、孫が大学の看護科に入学したことも影響しているのかもしれません。孫は人と関わることが好きなので、看護師とか保育士とかになりたかったみたいなんですけど、経済的自立のことを考えて看護師の道を選んだみたいです。シングルの母親が保育士で、2人の子どもを育てているんですけど、祖父母に頼らないと生活できない状況なので看護師を選んだのかなあとも思います。これまであまり勉強してこなかった孫が、やっと本気で勉強する気になったみたいなので応援してやりたいんですけど、正直言って、こんな状況でなぜ看護師?という気持ちがないわけではありません。こんな時だからこそ、応援してやらなきゃダメなのはよくわかっているんですけど…。男の子だったらもっと広く進路を考えられただろうにって思うんです。
 
【A】
ご相談者のあなたは、お祖母様でしょうか?まったくおっしゃる通りなのですが、だからこそ、父親のいないお孫さんのために精一杯長生きして応援し、あなたの生きている間にこのジェンダーギャップを世界からなくしていただきたいです。
 
昨年から続くコロナ禍で女性が失業したり、女性の家事育児の負担が大幅に増えたりしています。「リスペクトイーチアザー」社の代表で、「未来子育て全国ネットワーク」の代表でもある天野妙さんは、「現場で感じるジェンダーギャップは“気絶級”」とインタビューに答えて言っています。
 
近年、男性の家事育児に抵抗がなくなりつつあるとはいえ、まだ男性の家事育児は「手伝う」という言葉に表されるように、「当事者」という感覚がありません。男性はあくまで「手伝う人」なんです。内閣府の調査でも、男性が1日の家事に使う時間は家事17分、育児49分、買い物16分、看護介護に至ってはわずか1分となっています。元々、歴史的にも介護や看護は「女の仕事!」と決まっているかのように夫の両親の介護看護、時には夫の両親の兄弟姉妹の介護や看取りまでやってきました。
 
アフガニスタンに駐留してきた米軍の最後の部隊が8月30日深夜に首都カブールから撤退したというニュースが流れました。女性の権利を認めないと言われるタリバンも、正当な国家であることを世界に認めさせようと、今回は「人権への配慮」をアピールしてはいますが、国営テレビではすでに多くの女性キャスターたちがやめさせられた、外出にはブルカ(肌を隠すための布)で全身を覆わなければならなくなるのではないかと、ブルカを作る布が5倍ほどに値上がりしても売り切れているなどと報道されています。世界中にジェンダーギャップに苦しめられている女性がたくさんいるのが現実なのです。
 
さて、お孫さんですが、この状況下で看護科に入学されたとのこと、経済的自立のことを考え看護師を目指したということであれば、ジェンダーギャップを何とか乗り越えようという感覚をお持ちなのでしょう。
 
あなたはどうでしょう?「こんな状況でなぜ看護師?」というお気持ちがおありのようですが、コロナ禍で医療現場が疲弊していること、感染リスクが高いことなど、お孫さんのことを心配なさってのことと思います。「男の子だったらもっと広く進路を考えられた」ともおっしゃっているので、ジェンダーギャップについての問題意識もお持ちのこととは思いますが、心の奥に「そんなに大変な仕事に就かなくても結婚して主婦になればパートでいいんだから」というお気持ちがおありではないですか?お孫さんが持っている使命感、ジェンダーギャップに対する抵抗など、よく理解してあげてしっかり応援してあげてください。
第214回

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