男と女のQ&A【子親編】「母の作ったものしか食べない義父」

【Q】
夫とは結婚して30年になります。夫には姉と弟が一人ずついますが、紆余曲折を経て、義母の希望もあり、私たち夫婦が今年の初めから両親と同居することになりました。夫と義母とは仲がいいので、それなりにうまくはやっているのですが、問題は義父で、義母の作ったものしか食べないんです。もしかすると少し認知症が始まっていてわがままになっているのかなあなんて思ったりもするんですけど、全くそんな風には見えないので、夫も含め周りには言えないし、困っています。何度か義姉にも来てもらって、食事の支度を手伝ってもらったりもしたんですが、やはり義父は義母が作ったもの以外は気に入らないらしく、箸をつけません。今はまだ義父の分くらいは義母が作れますけれど、今後、義母が作れなくなった時に、どうやって義父に食事をさせるかとても心配です。
 
【A】
よくあるお話ですね。お義父さんは長年、おかあさんの味に慣れ親しんでいるので、それが一番身体にも心にも合っています。そして今、お義母さんはお義父さんの分と自分の分を作ることを嫌がっている様子ではありませんよね。あなたは「今後、義母が作れなくなった時に、義父にどうやって食事をさせるかとても心配です」と言っていますが、とりあえず今はお義母さんにお願いして、今まで通りお義父さんの分も作っていただいたらいいでしょう。
 
むしろ、同居し始めた長男の妻、いわゆる嫁が急に台所を全部取り仕切って家族全員の食事を作ってしまったとしたら、きっとお義母さんの出番がなくなって気力を失い、お義母さんまで認知症的な症状が出ないとも限りません。お義父さんがお義母さんの食事しか召し上がらないことを活用して、あなたからお義母さんに「お義父さんの分はなんとか作ってほしい」とお願いしてください。そして、お義母さんの味付け、材料の選び方、野菜の切り方、煮方焼き方…をあなたがお義母さんから教わってください。
人に大切なことは、一生その人の出番があることです。自分が誰かの役に立っているという意識が人には必要です。それがなくなった時、その人の人生は終わってしまうのです。
 
あなたは「紆余曲折を経て、義母の希望もあり」夫の両親と同居された。「夫と義母とは仲がいいので、それなりにうまくはやっている」とのことですが、根本のところに思い込みがあります。それは、お義父さんの食事作りを自分がしてお義母さんの負担を減らすことがお義母さん孝行、いい嫁だと思っているところです。お義母さんと仲のいい夫からも自分に感謝してもらいたい思いも感じられてしまいます。
 
あなたに一つ問いたいことがあります。さだまさしさんの「関白宣言」の中に、
 
 お前の親と俺の親と どちらも同じだ大切にしろ
 姑小姑かしこくこなせ たやすいはずだ愛すればいい
 
というフレーズがあります。
 
「紆余曲折」、心のどこかに「なんで私が…」というわだかまりはありませんか?お義父さんはそれを感じているかもしれません。「愛すればいい」、とてもうまい表現だと思います。
 
さて、「お義父さんの出番」は、今のところ「お義母さんの食事しか食べない」ということなんです。そしてあなたの出番は「お義母さんからお義父さんの食事について教わる」ことです。その様子を見たお義父さんは、きっと徐々に自分の妻と息子の妻が協力して作った食事をいつからともなく美味しく召し上がるようになると思います。
夫の両親との同居を了承されたあなたに敬意を表しながら、食事のことだけでなく、それぞれの出番を日常の中で、人生終わるまで落ち続けられることを願います。
第220回

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