男と女のQ&A【親子編】「幼児番組ってジェンダーフリーじゃない」

【Q】
幼稚園に通う6歳の娘と4歳の息子がいます。朝夕に子ども向けのテレビを観せています。私が子どものころから続いている番組もあって、幼児教育にはいいかなっていう気持ちと懐かしさから観せてるんですけど、ジェンダーが問題になっているのに、幼児向けの番組はそれとは正反対のことをやっているように感じて、このまま子どもに観せ続けていいのかなあと迷ってしまうことがあります。つまらないことですけど、うちの場合、父親(おとうさん)が一緒に観ることの方が多いのに「おかあさんといっしょ」だし、この前昔の映像が流れてきた時は「やるきまんまんマンとウーマン」の映像に驚いたんです。男の子と女の子が三輪車で遊んでいる映像に「はずかしかいじんをぶっとばし」、大きな魔王に立ち向かう女の子の映像に「こわがりまおうには ウインクこうせん」と歌がかぶって、女の子がウインクしてハートを飛ばしてやっつけたんです。こんなことやってたんだなあと思いながら「今の時代にこんな映像流していいの?」とすごく疑問に感じました。確か紅白歌合戦は「紅白」色を薄めて「カラフル」がテーマだったような…。大人の番組をジェンダーフリーに近づけても、もっとも影響のある子どもの番組がこれじゃダメですよね。
 
【A】
「ジェンダーが問題になっているのに、もっとも影響のある子ども向けの番組がこれじゃあダメ」というあなたのご意見に全面的に賛成です。むしろもっと腹を立てているかもしれません。おっしゃる通り「おかあさんといっしょ」というタイトルといい、「はずかしかいじん」や「ウインクこうせん」に至っては呆れかえるばかりです。
 
社会はやっとジェンダーフリー、ジェンダーからの解放、「社会的につくりだされた男女の違いから起こる不平等」から自由になることの大切さに気づき、強迫観念のように迫ってくる「男らしさ」「女らしさ」が、いかに個々の人間を縛りつけ、多くの弊害を引き起こしてきたかの反省に立って前を向いているところなのです。それなのにマスコミがこの状態では日本のジェンダーギャップ指数が他国に遅れているのは仕方ありません。
 
世界経済フォーラムの2021年発表の順位は総合順位(経済・政治・教育・健康)は156カ国中120位でした。先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となっています。1位2位3位のアイスランド・フィンランド・ノルウェーにしても長い男尊女卑の歴史の中から、それがいかに人間としての幸せを損なうものかに気づいて改革してきた結果なのです。日本でもジェンダー・フリーの理念に基づいて子どもたちの教育に関わる教材やカリキュラムの見直しが行われ、家庭科の男女共修や制服の見直し、男女混合名簿などが整備されつつあります。が、教育現場ではまだまだ暗黙のうちに伝えられるジェンダーの固定観念があふれています。
 
小学校の先生は女性が65%を超えるにもかかわらず、校長先生や副校長、教頭先生は80%が男性だったり、高校の教育現場は校長先生は95%が男性です。性別に関わらず誰もが等しく教育を受ける権利は憲法で保証されているにも関わらず、男女の大学進学率や専攻分野の格差はまだまだ大きいのが実態です。それは「子ども達本人の考え」というより私たち大人の中に男の子は大学以上の学歴を67%の親が望み、女の子は44%の親しか大学進学を望んでいないという統計からも分かります。
 
医科大学で女子学生を入試で差別していた事件はまだ最近のことです。政府も1986年の男女雇用機会均等法から30年経ってやっと女性活躍推進法が2015年に成立しました。女性にとって生きづらい社会は当然、男性にとっても生きづらい社会です。私たち自身の中にまだ残る隠れた男女差別の意識に気づくこと、そしてあなたのような考えを持ち、マスコミにも意見を言ってくださることをお願いします。
第224回

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