男と女のQ&A【職場編】「汗で透ける下着が男性社員の視線の餌食に…」

【Q】
また夏がやってきます。
私の職場では、男性外回り、女性内勤とほぼ決まっています。ある程度は希望も出せるので、女性でも外回り、男性でも内勤ということもありますでも、会社は希望を通してくれるのに、私達社員がそうしないんです。以前、外回りの営業で男性より優秀な結果をだしていた女性の先輩がいたんです。「課長も近い」なんて言われてました。
夏になると外回りは大変で、クールビズと言っても上着は欠かせない。営業に行くのにタクシーは使えない。歩いている時はシャツだけでも、営業先でまさか汗でグショグショで下着が透けるようなシャツというわけにもいかないので、上着を羽織るんです。でも冷房で身体が冷えるまでは汗が噴き出るじゃないですか。うちの会社に戻ってきても同じなんです。自分の会社では上着は羽織りませんけど、そうすると汗で下着が透けたり、脇汗のシミが見えたり…。ノースリーブだったりするともっといろいろ見えますよね。それが男性社員の視線の餌食になるわけです。それってかなりきついんです。それが原因で、先輩も昇進を諦めて内勤に戻りました。男だって女だって汗かくのは同じじゃないですか。でも汗の意味が違うんですよ。
 
【A】
まったくその通りですよね。
せっかく男性より優秀な結果を出していた女性の先輩、「課長への昇進も近い」とまで言われていたのに、「彼女のかく汗」が男性社員の視線の餌食になり、それが原因で昇進も諦めて内勤に戻ったとは…
 
そもそもその先輩が「汗」をかいてでも外回りの仕事を一生懸命やっていたのは、彼女がその仕事が好きだし、何よりも外回りをして会社に貢献したいという気持ちがあってのことだったんですよね。農耕時代なんて、女も男も区別なく「汗水垂らして」畑を耕していたんですものね。そうやって男女ともに働かないことには生きていけない時代には、女の汗が男の視線の餌食になるようなことはなく、男女ともに「汗水垂らして」働くことは美徳でした。
 
ですから、汗にまつわる故事、ことわざ、慣用句も多く存在します。「人のためにひと汗かく」「汗水流す」「汗と涙(血)の結晶」「額に汗する」「玉の汗を流す」等々、苦労をいとわず一生懸命働く様や大変な苦労や努力を重ねた末に得た成果のことを指しています。「冷や汗をかく」「汗顔の至り」「手に汗を握る」にしても、男女を問わず恥ずかしさや危険な状態、緊迫して緊張したりする様子を表しています。こう考えてくると、男の汗と女の汗の意味を違って考えるのも、現代社会におけるジェンダー、明らかに性差別です。
 
企業の「ダイバーシティ(多様性)」の普及は1990年代から言われ始めて、未だ実現にはほど遠く、令和2年(2020年)に経済産業省は「ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ」と題して、性別や年齢、人種、障害、価値観、ライフスタイルなど、「表層的」「深層的」いずれの差別もしないでという呼びかけをしています。
服装や化粧の強制をしない、男性の化粧も可とした企業もあるかと思えば、「#KUTOO」(靴と苦痛をかけて名付けた)運動に代表される女性の靴については、未だに航空会社や百貨店など、ヒールの高さ4~6㎝、着地面の幅は2~4㎝と細かく規定しているところもあります。ただ、生命保険会社などでは、ヒールの高い靴とスカートでは、緊急避難時の対応ができないとして、スニーカー勤務を奨励する企業も出てきています。
 
「#KUTOO」運動は「表層的ダイバーシティ」への動きでわかりやすいのですが、あなたの相談のような「汗」の問題は、「深層ダイバーシティ」に関わる価値観のずれですから、なかなか改善は難しいのですが、多様な価値観を受け入れられる社会の風土作りが大切なので、あなたの考えを周囲に「#MeToo」し続けてください。
第231回

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