男と女のQ&A【親子編】「夫が主夫、息子はいいけれど娘にはよくない?」

【Q】
我が家では夫が家事をこなします。ほぼ何でも私より器用にやるので、家事は夫の仕事みたいな…。子育てもほとんどを夫が担ってきました。特別意識をしたわけじゃないんですけど、夫より私の仕事の方が忙しかったし、何でも夫の方がうまくこなすので、それが我が家の「普通」だったんです。子どもたちも何も疑問を感じていなかったと思います。息子が1人娘が2人いて、3人とも結婚したんですけど、息子は「夫婦ってこういうもの」って思っていたらしく、手伝うというレベルですけど家事もやっているみたいで、嫁も息子を「何でもやってくれて優しいです」と言ってくれます。ところが娘2人は夫の考え方や行動が、我が家とまるで違うことに戸惑ったというか、なじまなかったというか、結婚してもすぐ別れてしまいました。長女は2度もです。娘と話をしたり、婿の様子を見ていると、「男はこうあるべき」というような意識や行動があって、乱暴なわけではないのだけれど、娘の考える夫婦像、家庭像と大きな違いがあって、ついて行けなかったみたいです。私達は、男女平等の夫婦、家庭を作ってきたつもりだったのに、2人の娘を見ていると間違っていたのかなあと考えてしまいます。
 
【A】
「男らしさ」「女らしさ」が「男らしい人」、「女らしい人」という言葉になると多くの場合は褒め言葉として使われるのですが、しかしそれは強迫観念のように女性にも男性にも迫ってきて、個々の人間を縛りつけ、たくさんの弊害を引き起こします。
生まれた時からその「らしさ」は運命づけられ、社会や家庭がその基準に従って赤ちゃんたちを育てます。幼稚園や保育園に行けば、いくら国がジェンダー・フリーの教育に基づく取り組みを推奨しても、文化や習慣、そして人の心の中に厳然として男女の差別が存在するようになります。ころんで膝をすりむいても「男の子は強いよね、泣かないの!」と言われ、女の子が活発にスカートをひるがえしてジャングルジムのてっぺんまで登っても誰も褒めないばかりか「いやあねぇ、スカートがめくれてるよ!おてんばねぇ」と叱られる。
 
1993年には中学で、1994年には高校で、家庭科の男女共修が始まったり、男女混合体育や男女混合名簿が検討されたり、女子の制服もズボンを選択できるようになったりしましたが、相変わらず小学校の先生は女性が圧倒的に多いのに、校長先生は83%が男性だったりします。医科大学の入試で女性が足切りをされていたのは記憶に新しいことです。メディアの中にあふれるジェンダーのステレオタイプは、「男らしさ、女らしさ」の規範として、人々の意識にしみ込んでいきます。ニュース報道のアナウンサーも女性は補助的な役割を果たしていることが多く、女性がメインキャスターを務めると、話題になるのはキャスターとしての力量より、「かわいい」とか「胸が大きい」とか「美脚」とか、容姿に関わることがほとんどで、テレビ局もそれを狙って起用しているのではないかと思いたくなります。
 
政治の世界では、女性は添え物の感じです。アンペイド・ワークという概念は「家事や育児という無償労働を位置づけるために生まれた概念」です。そればかりか、自分の両親は勿論ですが、夫の両親の介護をするのも女性の役目、というのが当たり前になっています。要介護者の73%が近親者の女性(妻、嫁、娘)に介護されているというのが現実です。もっと基本的なこいとを言えば、「女言葉」と「男言葉」は未だにハッキリと別れていて、赤の他人に「おまえ」と呼ばれたらムッとしますが、男性の恋人から「オレにはおまえだけだ」と言われると「うれしいわ、○○さん」と返して喜ぶ女性は多くいます。「おまえ」「○○さん」と呼び合う中で、対等な関係が結べるはずはありません。
 
あなたのお子さん、特に長女の方はあなたの夫、父親を母と対等に生きている男性のモデルとして学んだにもかかわらず、その概念が根底にない男性と結婚してしまい、別れる決意をなさったのでしょう。ぜひお二人を応援して差し上げて欲しいです。
第234回

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