男と女のQ&A【夫婦編】「ペットはかすがいにならず」

【Q】
結婚して15年、不妊治療もしたんですけど妊娠できず、2年前に諦めました。私も夫も子どもがほしかったので、不妊治療をしない決断をしたときは、2人だけで人生をやっていくむなしさを感じ抜け殻のようでした。心に空いた穴を何とか埋めようと夫と相談して犬を飼うことにしました。2人でペットショップを回って新しい家族を探すのはとても楽しくて、気に入った犬を見つけたときは「これで私達の人生も豊かになる」と期待したんです。でも、その楽しさが続いたのは1ヶ月くらい。最初は2人で可愛がっていたのですが、だんだん夫と犬の距離が近くなり、私が入り込む隙がなくなってしまったんです。「子はかすがい」なんて言葉がありますけど、「ペットはかすがい」にはならず、私と夫の間に入り込み夫婦関係を壊す存在になっています。私は夫がペットと楽しく過ごすための道具になってしまい、私は疎外感を感じるだけです。
 
【A】
不妊治療を諦めてむなしさを感じ抜け殻のようになった2年前のあなたの辛さに改めて共感いたします。
結婚すれば「普通」子どもはできるものという社会通念がまだ強い中、不妊を心配したことがある夫婦は35%、夫婦全体の約3組に1組の割合で、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は18.2%、5組に1組います。(2019年厚生労働省)
それでも妊娠に至らずあなたのように諦める方も多いのです。その心に空いた穴を何とか埋めようと夫と相談して犬を飼うことにされた経緯には拍手を送りたいと思います。新しい家族を探し「これで私達の人生も豊かになる」と思ったのも束の間、「夫と犬の距離が近くなり私の入り込む隙がなくなった」「夫婦関係を壊す存在」「疎外感を感じるだけ」とは本末転倒。
 
元々、人間と犬の関係は1万5千年も前から続いていて、イスラエルでは人間と犬がともに埋葬された最古の遺跡が発掘されました。なんと1万2千年も前のものだそうです。日本でも縄文早期の遺跡に埋葬された犬の骨が見つかっているので、当時から大切にされていたことがわかります。犬は狼が人に飼い慣らされ、狩猟のパートナーとなったり、野生動物から人を守る生活のパートナーになったりして進化してきました。
今では「ペット」=「愛玩動物」という呼び方も廃止されるべきとして、「コンパニオン(仲間)アニマル」「ファミリーアニマル」「伴侶動物」などと呼ぶアニマルライツ運動団体もあります。なんとイギリスでは「育児休暇」ならぬ「ペット休暇」を認めている会社があったり、スイスではペットを飼う時の厳しい法律があったりして、モルモット、ウサギ、インコ、金魚など社会性のある動物は2匹、2羽以上で飼うことが義務付けられています。えっ?金魚も?!とビックリされる方も多いと思いますが、ペアのパートナーが死んだ後の新しいパートナーを紹介してくれる会社もあって、生きものの権利を守るための法律が細かく制定されているそうです。
 
確かに「ペット」=「愛玩動物」となると、人の欲求を満たすために飼育され、そばに置いて仕草や肌ざわり、鳴き声を楽しみ可愛がる、まさにペットの語源のPetty=小さな存在、Petting=撫でるという一方的に人の気持ちや愛情を与えるだけの対象に過ぎなくなります。
あなたの夫さんはワンちゃんを溺愛するあまり、まさに「ペット」としての存在におとしめているようですね。人間の伴侶に近しい生き物としてお互いに心が通じ合う対象や立場として接する相手と考え、あなたが夫と犬の間に積極的に入り、ワンちゃんが本当のファミリーアニマルになれるよう、犬を犬としてしっかりしつけて夫を育て直してください。
第238回

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