男と女のQ&A【親子編】「息子が選んだランドセルの色はアクア」

【Q】
息子が小学校に入学します。入学前の一大イベントと言えばランドセルや学習机選びです。ランドセルは夫の両親、学習机は私の両親が御祝いに買ってくれることになりました。学習机は、こちらで買ったあと私の両親がその分の御祝いを現金でくれることになったのですが、ランドセルは夫の両親が直接手渡したいらしく、インターネットで欲しいランドセルを選んで、両親が購入してうちに持ってくることになったんです。ここで困ったのが、息子の選んだ色がアクア、明るい水色だったこと。息子は小さいころから水色が好きで、絵を描くときもよく水色を使うので、好きな色を選んだだけのことなんですが、男の子の色と言えば黒が普通で、せいぜい紺とか深緑ですよね。アクアなんて、男の子が背負っているのを見たことがありません。私と夫でも躊躇する色を夫の両親にお願いするのはすごく大変だし、学校でいじめにあうことも心配です。どうやって子どもを説得すればいいでしょうか。
 
【A】
ランドセルの歴史は江戸時代に幕府が洋式軍隊制度を導入する時、持ち物を収納するためにオランダからもたらされたバックパックを利用したのがランドセルの発祥とされています。ネーミングもオランダ語の「ransel」(ランセル)がなまって「ランドセル」になったとされています。色は黒が主流でしたが、牛革でムラなく仕上げるには黒でなくてはダメで、その後も赤しか出せなかったようです。軍人の背のうとして使っていたランドセルは、動きの激しい小学生にはぴったりでしたし、両手が空く、転倒時にはクッション代わりにもなる、という危険防止のためにも都合のいいものでしたが、牛革で手仕上げをする黒と赤のランドセルは庶民には高級品でした。
 
ランドセルが小学生の荷物を入れるバッグとして定着しているのは日本だけの文化です。時代が経つにつれ、牛革だけでなく安価で軽い合成皮革のものが増え、庶民の間でも一般的になり、最近では色も多様になってきました。2001年にイオンが業界初の24カラーのランドセルを作り発表しました。価格も大幅に下がり、3~10万円くらいまでと多様化しました。24カラーが発表されてから、様々な色、様々な装飾を施したランドセルを背負う小学生の姿が見られるようになりましたが、今回のご相談のように「男の子の人気色」「女の子の人気色」と業者が規定して販売している現状があります。ジェンダーフリーが叫ばれ、性や個性の多様化の時代を迎えようとしている現在、性と色を結びつけた製品の販売はやめてもらいたいものです。
 
私事になりますが、一番下の息子が幼稚園に入園したとき、椅子に敷く座布団の販売がありました。集金袋に記載された赤と青の文字のどちらかに丸をつけて申し込むのですが、息子は「赤がいい」と言うので赤に丸をつけて申し込んだところ、その日のうちに幼稚園から「赤に丸がついていますけれど青の間違いですよね。直しておきました」と電話がありました。「いえいえ、本人が赤がいいと言っていますので赤に戻してください」と答えて赤の座布団を買ったんです。そのころテレビで流行っていた戦隊もののリーダーがレッドホークという赤だったからなんです。赤は、情熱、燃える炎の色で、強さの象徴の色でもあります。Jリーグでも、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、名古屋グランパスなど赤を基調にしたユニフォームのチームがあり、埼玉スタジアムが真っ赤に染まる浦和レッズ戦は圧巻です。若い男性の中には、赤を好む人もいて、赤いシャツ、赤いセーター、赤いズボンなど特別なことではありません。むしろ赤を好んで着る女性の方が少なく感じます。ですから、性と色を結びつけて考えているのは主に幼児教育や小学校などでしかありません。
 
さて、お子さんの「アクア」のランドセルについてです。なかなか微妙な色ですね。「息子は小さいころから水色が好きで、絵を描くときもよく水色を使うので、好きな色を選んだだけ」とおっしゃっている一方、「私と夫でも躊躇する色」とおっしゃっているので、実は反対しているのはおじいちゃん、おばあちゃんではなく、「私と夫」ですよね。ですから、「夫の両親にお願いするのはすごく大変」と考える前に、あなたと夫でよく話し合ってください。そして息子さんとも話し合ってください。一番大切なのは、お子さんの気持ちをしっかり受け止め、向き合うこと、説得ではなくお子さんの納得です。確かにいじめにあうことも考えられるでしょう。社会の流れに問題があるとしても、それを子ども1人の背中に背負わせては、とても背負いきれるものではありませんから、息子さんの意志を通すということになれば、「私と夫」がしっかり支えることが必要です。小学校と話をすることも必要になるかもしれません。その覚悟をしてから「夫の両親」に話をしてください。決して「私と夫」の意見をお子さんに押しつけ、むりやり「男の子の人気色」にさせるのではなく、お子さんの気持ちを大切にお子さんが納得のいく結論にしてあげましょう。
第249回

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