子どもとどう接する? ~言ってはいけない その一言~ 《取引編》

「泣くのやめたらチョコレート買ってあげるから黙りなさい」
「100点取ったら〇〇してあげる」
「全部食べたらシール1枚」

親がよくやってしまうパターンに「取引」があります。子どもは、自分の欲しいものが手に入ると思えば、比較的簡単に大人の言いなりになるものです。大人の都合で子どもを動かすには有効な手段ですが、子どもの成長にとっては大きなリスクをはらんでいます。

スーパーで泣き叫んでいる4、5歳の男の子がいました。なぜ泣いているのかよくわかりません。泣き始めたときは、おそらくはっきりした理由があったのでしょうが、その様子からすると、どうやら本人もなぜ泣いていたのかよくわからなくなってしまっているようでした。
こういう時の親は、本当に困ってしまうもので、泣いている子どもには腹が立つのに、うっかり変な言葉をかけようものなら、火に油を注ぐようなことになってしまう。本来、毅然とした態度で臨むべきなんだろうけれど、周りの買い物客はって言うと「何いつまで泣かしてるのよ!」というような冷たい視線でこっちを睨みつけたり、「呆れた親」みたいな雰囲気で露骨に無視したり…。
結局この時のお母さんは、子どものそばまで行って怒鳴りました。
「いつまで泣いてるの! いい加減に黙りなさい!」
まあ、ここまではよかったんだけれど、どうもこの後がいけない。
「泣くのやめたらチョコレート買ってあげるから黙りなさい」
あらあら、なんと言うこと。泣いていることとチョコレートは、まったく関係がないのに…。
その言葉につられてか、子どもの泣き声はあっという間に小さくなり、10秒もしないうちに聞こえなくなりました。
しばらくすると、誇らしげにチョコレートの箱を手にしたその男の子とすれ違いました。どうやら、約束通りお母さんにチョコレートを買ってもらったようでした。
これはこの親子の、”人生における不幸の始まり”なのです。
このお母さんは子どもに、”泣き叫べば欲しいものが手に入る”ということを教えてしまったのであり、この男の子は”欲しいものがあるときは泣き叫べばいい”と学んでしまったのです。

「取引」には、「100点取ったら〇〇してあげる」「合格したら〇〇」してあげるなんていうのもあります。
チョコレートの例とは少し違って、「100点を取る」とか「合格」という内容がプラスのことなので、一見よさそうにも感じるのですが、子どもが自身の考えで行動するのではなく、親の強い支配のもと行動するので、自立を大きく妨げる要因になります。

幼児教育でよく使われる手法にご褒美があります。お弁当や給食を全部食べたときのシールや嫌いなものを食べられたときのシールなども「取引」と通じるところがあります。
シールをもらうことが目的になり、子どもが無理をして食べることで、本来楽しいはずの「食」が楽しいことから苦しいことになってしまったり、シールをもらえない子がいじめの対象になったりすることもあります。「シールがもらえないから幼稚園に行きたくない」なんていうことも起こるのです。幼児教育に携わる方には、ぜひ注意をしていただきたい部分です。

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