男と女のQ&A【親子編】「チアリーディングはやめてほしい」

 
【Q】
娘の通う高校は甲子園の常連校で、娘はチアリーディング部に入っています。毎年、甲子園の時期になると夢中になって練習をしています。私としては、部活に一生懸命になっているのは嬉しいのですが、チアリーディングは盗撮の対象になり頻繁にニュースになるのでとても心配をしています。以前、盗撮された映像が校内外で話題になり、様々な誹謗中傷が広がってしまい、映っていた女子生徒がうつ状態で不登校になってしまったことがありました。盗撮する人間は絶対に許せないのですが、娘にも男性の性的興味の対象になるようなチアーディングではなく、「男子〇〇部」「女子〇〇部」というように男女どちらにもあるような部活動をしてほしいのですが…。
 
【A】
チアリーディングは、1920年代まで実は男性のスポーツでした。1923年にやっとミネソタ大学で女性のチアリーダーが許されました。今でこそ、あなたが「高校生の娘さんが夢中になって練習していることを心配されるような部活のイメージ」になってしまっていますが、チアリーディングのルーツも本質も違ったものなのです。まったく男性の性的興味の対象になるようなものではなく、連敗に次ぐ連敗を重ねていたミネソタ大学のフットボール部の同級生を応援し元気づけるため、ジョニー・キャンベルという医学生が6人でチームを作り、メガフォンを持って組織されたチアでチームを勝利に導いたのが始まりでした。1898年のことです。
 
その30年ほど前にも、ブリヂストン大学のフットボール大会で周囲を元気づけるため、全員が男子学生のクラブを作ってパフォーマンスをしたという写真も残っています。「チア」とは、「応援・励まし・元気・喜び」などという意味です。
 
1923年以降、女性たちが徐々にチームに参加しはじめ、1940年代には男性が第二次世界大戦で徴兵されたこともあり、多くの女性が参加するようになりました。当時のユニフォームは、今のようなミニスカートではなく、ロングスカートでした。あなたが心配されている盗撮の対象になる短いスカートは、全米チアリーダーズ協会が設立され、技も高度なものとなるにつれ、長いスカートによる事故が多発し危険なので、ユニフォームとして規定されたものなのです。
 
全米では、どこの小中高でもチアリーディングがあり、指導者は高いレベルのチア技術を教え、国際大会も開かれ、日本の高校や大学のチームも参加しています。チアリーダーであるということは、学校の代表であり、非常に名誉なことであるため、特に高校では学校のイニシャルとチーム名をユニフォームにつけることになっています。
 
このように、元々は男子学生の始めたチアダンスが、今は女性の競技のようになっているのも、応援したり励ましたりするのは「女性の得意技」というジェンダーであるという研究もあります。2019年に「チア男子」という映画が日本で公開されましたが、その中に「チアは女子がやるものだという固定概念も冷たい視線もぶっ壊したい」という台詞がありました。
 
現在は、チアリーディングは1つのスポーツ競技として世界に広がりつつあります。チアリーディングだけでなく、様々な競技の女性アスリートが性的興味の対象となり、時にはそれが売買の目的になったりして、そのために競技を続けられなくなる女性も出ている昨今、対策は急務ですが、中にはそういった男性の興味を利用して、有名になろうとする女性も少なくなく、ジェンダー教育の必要性が増していると言えるでしょう。お子さんの真剣な気持ちを損なうことのないよう、上記のようなチアリーディングの歴史を調べてみたり、話してみたりして、チアリーディングの本来の姿をお子さんと共有してみてはいかがでしょうか。
第259回

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