男と女のQ&A【親子編】「うちの子の学校にも盗撮先生?」

【Q】中学2年の娘がいます。先日、隣の中学校の男性教師が女子生徒を盗撮したということで処分されたという話が保護者の間に広がりました。ニュースでよく報道されるので、いずれは身近なところでも起こるだろうという覚悟はできていたんですけど、実際にそういう話を聞くとショックです。
娘にも聞いてみたところ、生徒の中でもそういう話をしてるというのですが、びっくりすることに女子生徒の間では、「うちの学校にもいるよね、そういうやつって話してるよ。でも私はそういう被害に遭ってないし、みんなが言ってる先生は私は好きだから」と言います。何とか名前を聞き出そうとしたんですけど、「もし違ってたら先生に悪いじゃん。だから言わない」とそれ以上何も言いません。「うちの学校にもいる」って言っている子に何先生か聞いてみるとか、娘の話を元に学校に話しに行くとか、ママ友と話をして情報素収集するとか、どう対応していいのか迷っています。
 
【A】ご心配はもっともですが、あなたの考えている対応はどれもやめてください。
「うちの学校にもいる」と言っている子に「何先生か聞いてみる」、「娘の話を元に学校に話しに行く」、「ママ友と話をして情報収収集する」のすべてです。
 
なぜこれらの行動を母親であるあなたが起こしてはダメなのか…。実はココが子育ての一番大事な勘所なのです。話が「盗撮先生」のはなしでなくても同じなので、これはしっかり憶えておいてください。この3つの行動は、せっかく母親であるあなたを信頼して話してくれた中学2年生のお子さんを裏切ることになるからです。
 
「うちの学校にもいるよね、話してるよ。でも私はそういう被害に遭ってないし、みんなが言ってる先生は私は好きだから」と自分の状態と意見をしっかり伝えています。その上、「もし違ってたら先生に悪いじゃん。だから言わない」と彼女の固い意志も述べています。にもかかわらず、お子さんの意見、意志を無視する対応が「娘の話を元に学校に話しに行く」です。これはどう考えても根本の部分で「娘の話が元」にはなっていません。お子さんの強い意志は、「みんなが言ってる先生は私は好き」「もし違ってたら先生に悪い」です。噂を元にして話を広げ、その結果、無実の人が命を絶ったり、一生を台無しにされるというえん罪などを起こしてはならないという立派な態度です。それを母親であるあなたが裏切ることになります。
 
「ママ友と話をして情報素収集する」はもっとひどいやり方です。お子さんが正直に語ってくれた話を信じず、親同士の間に噂を広め、不信感を煽ることになります。あなたとお子さんとの間にはこれまで培ってきた信頼関係があり、お子さんは本音で実際に起こっているままを話してくれているのですから、あなたが迷っている3つの行動のうちのどれか1つでも起こそうものなら、信頼関係は一気に崩れ、お子さんは今後一切口を開かず、すべて隠すという行動を取ることになるでしょう。もしそのような状況になった場合、実際に事件が起きたとしてもあなたは何も知ることはできません。それだけででなく、お子さんは苦しい気持ちを1人で抱え込むことになり、お子さんにとっても最悪の結果を招きかねません。
 
中学2年生、13、4歳の女生徒はたくさんの発達課題を抱えて成長していきます。その中の大きな課題の1つが「両親や他の大人からの情緒的独立を成し遂げ、社会的責任を伴う行動を望んで成し遂げようとする」(1953年、ハヴィガーストの発達課題)ということです。お子さんが学校で感じた不信感や違和感をすぐ話してくれる今の親子関係を大事にして、しばらく行動は起こさず「何かあったらまた話してほしい」旨を伝えて、様子を見てください。あなたの取るべき行動は、こういうことが起こる前からPTA等で役員を引き受けて、時々学校に行くなどという形での行動です。これまでの関係を崩すことのないよう適度な距離を保ちつつ、丁寧な対応に努めてください。
第269回

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